日本は世界で第4位のコーヒー消費国で、コーヒーを抽出した後に残るかすが大量に発生し、捨てられています。飲料メーカーやスターバックスなどの一部カフェチェーンでは、コーヒーかすを肥料や敷き藁として再利用するなどの取り組みを進めている企業がありますが、小さなカフェや家庭などでは再利用は進んでいません。
水分を含んだコーヒーかすの処理には膨大な焼却エネルギーが必要で二酸化炭素の排出にもつながっています。せめて乾燥させてからゴミ処理に出すようにしたいものです。更に、コーヒーかすを再利用することでゴミとして排出しないことは、個人ができる環境への大きな貢献となります。
ここでは、コーヒーかすの持っている優れた機能を活かしてコーヒーかすを再利用することで、お得で、かつ環境を守ることにもつながる方法をご紹介します。
料理用途
コーヒーかすは料理に使用できます。肉料理に使う場合はスパイスとして使い、コーヒーの苦味や風味を楽しむことができます。デザートに使う場合は、例えばケーキの材料に加えることができます。
また、パンの生地に混ぜ込んで焼くと、香ばしさが加わって風味豊かなパンができあがります。
園芸用途(肥料・堆肥として)
コーヒーかすは家庭菜園や植物の肥料・堆肥として利用することができです。コーヒーは、表面に多くの気孔がある「多孔質」と呼ばれる構造をしているため、土壌を整える役割を果たしてくれるのです。
肥料の作り方は簡単です。ダンボールを用意し、底にガムテープを貼って漏れないようにします。そして、新聞紙を2〜3日分敷き詰め、腐葉土を7割程度入れます。次に、乾燥させたコーヒーの粉を加えてよく混ぜ、毎日軽くかき混ぜて空気を取り込みます。発酵が十分進んだら、肥料の完成です。途中でコーヒーの粉を追加することもできます。
肥料の発酵の目安は温度です。発酵が進んでいる場合は、触ってほのかに温かみを感じることができます。
肥料を作る際には、いくつかのポイントがあります。コーヒーの粉は必ず発酵させてから使用しましょう。肥料として使用するためには、そのまま庭に撒いても効果がありません。また、乾燥させたコーヒーの粉を使用することも重要です。発酵中には、ダンボールの上部をカバーして、雨や虫が入らないようにしましょう。ダンボールの下には台を置いて、通気性を確保するようにしましょう。
また、土壌改良にも使用できます。具体的には、コーヒーかすを水に漬けた液体を、水や軽石などと混ぜて土壌改良すると、土壌がふかふかになり、水の保持力が高まります。菜園での利用方法としては、キャベツやトマト、パセリなどに使用することができます。
防虫用途(虫よけ・猫避け)
コーヒーかすは、虫よけ・防虫にも役立ちます。コーヒーに含まれる香り成分には、防虫効果があると言われています。例えば、コーヒーの粉を小皿に広げて火をつけると、その煙が蚊やその他の虫を寄せ付けなくします。ただし、小さな子供やペットに近づけないように注意しましょう。
キャンプなどで、広い面積に対して使う場合は、蚊取り線香の代わりにコーヒーの粉を使うことができます。耐熱皿などにコーヒーの粉を弧を描くように散布し、火をつけて焚きましょう。
また、アリや蚊、ナメクジ、カタツムリなどの虫や猫などはコーヒーの香りを嫌います。そのため、家の周りや生け垣、外壁付近の地面に撒くと、害虫除け・猫除けの効果があります。
消臭・脱臭用途
消臭効果を持つものとしては活性炭がよく知られていますが、コーヒーかすは活性炭と同様に多孔質構造のため、匂いを消臭することができます。特に、アンモニアの匂い(トイレとかの鼻を刺すような臭い匂い)の消臭力で比べた場合には炭の2〜5倍の消臭力があると言われています。
そのため、トイレに置くとアンモニア臭を減らすことができます。特に水分を含んだ状態でその機能を発揮するため、使用する場合は乾燥させずに濡れた状態で使用し、1~2日で交換してください。
袋に詰めたりペーパーフィルターに入れて靴箱に入れて、靴の臭いを取るのにも使用できます。靴箱に入れる場合は、カビの原因にならないように乾燥させてから利用することをお勧めします。
また、電子レンジは料理の匂いがこびりついてしまいがちです。コーヒーかすをレンジで加熱することで、レンジについた匂いを消すことができます。魚焼きグリルも同様に、湿ったコーヒーかすをトレーに広げて3分ほど加熱するとで脱臭効果が期待できます。
そのほかにも、そのまま灰皿に入れて使用したり、ペットのトイレ砂に混ぜたり、三角コーナーに少し入れるなど、あらゆる場面で消臭・脱臭用途で利用できます。
ジャムなどの食品が入っている瓶やタッパーの臭いを消すこともできるので、インテリアとして飾る際にも役立ちます。
美容用途
コーヒーかすはスクラブ効果が期待できます。石鹸代わりに利用することで、皮膚の角質が取り除かれて、お肌のつるつる感を実感できます。ボディケアとしては、オリーブオイルと混ぜてマッサージすることでリラックス効果を得るという方法があります。
ヘアケアにも使えます。頭皮をマッサージする際に使うと、頭皮に詰まった汚れや皮脂が取れて頭皮が清潔になります。この方法はフケや抜け毛の予防にもなり、髪の成長を促進する効果もあります。また、シャンプーの後に髪に練り込むこともできます。そうすると、髪に輝きが戻り、美しい髪になることができます。
ただし、黒髪や濃い茶髪以外の薄い髪色の人は、強くこすり過ぎると、コーヒーの色が髪に移ることがあるため注意が必要です。毛根をきれいにして、髪の再生を促進するために使われます。
染色用途
コーヒーかすを染料として利用する方法はいくつかあります。一般的な方法は、抽出後のコーヒーかすを水に浸して沸騰させ、染料液を作ることです。染料の色合いを調整するために、染料液の濃度や浸漬時間を調整することができます。
染色する素材によって、コーヒーかすの染色効果は異なります。コットンやリネンなどの天然繊維素材には効果的ですが、合成繊維素材には染色効果が弱いことがあります。また、コーヒーかすの品種や焙煎の具合によっても染色効果が異なるため、染める前に実験的に試すことをおすすめします。
染色する前に、素材を水で湿らせておくことが大切です。染色液を浸漬する前に、染めたい部分を固定しておくことで、色落ちを防止することができます。
染色液を浸漬した後、洗濯機で洗濯する場合は、別々に洗濯することをおすすめします。染色液が他の衣服に付着することで、染めたい色合いが変化してしまう可能性があるためです。
掃除用途
コーヒーかすは掃除にも使用することができます。キッチン周りの油汚れを落とすために、コーヒーかすと石鹸を混ぜて使うことができます。
ガラス製の食器を洗うときにコーヒーの粉を使うことができます。少量を水で溶かした液体に浸して振り洗いするとガラスがきれいになります。油で汚れた食器などもコーヒーの粉をつけてこすると汚れが落ちやすくなります。
しかし、食器についたコーヒーの色素が残ることがあるため、使用後は十分にすすいでから乾かすようにしましょう。また、金属製の食器はコーヒーの酸性が原因で錆びたり腐食したりする可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。
その他用途
上記以外にもコーヒーかすにはさまざまな使い道があります。その一例を紹介します。
- 除草剤
コーヒーかすには植物の育成を阻害する物質が含まれており、雑草の繁殖を防ぐ効果があります。 肥料・堆肥にする場合は発酵させる必要がありますが、除草剤として利用する場合はそのまま利用できます。ただし、カビや虫の発生を防ぐために乾燥させてから撒くようにしてください。 - 入浴剤
コーヒーの香りが好きな人は、入浴剤代わりに利用するのものおすすめです。コーヒーかすをさらし袋などに入れてお風呂に浸けるだけです。 - 靴磨き・金属磨き
コーヒーかすに含まれている油分がワックスの代わりになって、靴磨き・金属磨き時につやが生まれます。 使い方は、乾燥させたコーヒーの粉を布に包んでやさしく磨くだけです。
コーヒーかすの乾燥方法
このように便利に伝えるコーヒーかすですが、毎日コーヒーを淹れていると、利用するよりも溜まっていく量が多いため、どこかで保存しなければなりません。しかし、そのまま放置するとカビが生えてしまうため、ひとまず乾燥する必要があります。
ここでは、コーヒーかすの乾燥方法を3つご紹介します。
①自然乾燥
コーヒーかすを薄く広げ、直射日光の当たらない風通しの良い場所に置いておくと、自然に乾燥することができます。
ただし、乾燥には時間がかかります。そこで、「エアコンの室外機の前に置く」という方法があります。コーヒーかすを薄く広げた容器を不要なストッキングで包んで縛り、室外機の前に高さを調整して置きます。室外機から出てくる排気でコーヒーかすの水分を飛ばすことで乾燥時間を早めることができます。
②オーブン乾燥
オーブンを150度に予熱し、コーヒーかすを天板に薄く広げます。その後、オーブンで20分程度加熱すると、乾燥させることができます。ただし、温度や時間を調節しないと焦げてしまうことがあるので注意が必要です。
③電子レンジ乾燥
電子レンジで乾燥させることもできます。コーヒーかすを電子レンジのお皿に薄く広げ、600W程度で2分間加熱すると、乾燥させることができます。ただし、加熱時間を調整しないと焦げてしまうことがあるので注意が必要です。
おわりに|コーヒーかすを再利用する方法
家庭で発生するコーヒーかすを個人が再利用する方法についてご紹介してきました。この記事を読んで、できる範囲で取り組む人が増えれば嬉しいです。少なくとも、水分を含んだ状態では捨てないようにしましょう。
廃棄されているコーヒーかすの現状と、コーヒーかすを再利用するための企業の取り組みやアップサイクル事例について知りたい人はこちらの記事をご覧ください。